メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

「たった一人で移住希望者を増やした」とまで言われる女性に尾道で話を聞いた(後編)

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前回からのつづきです。

www.yanvalou.yokohama

 

尾道は海外との草の根交流も多いと言います。豊田さんの周辺では

が近年交流のある地域、あるいは気になる地域だとのことです。詳しく聞いてみましょう。

 

古い街並みの保存は、万国共通の課題 

Q: 豊田さんからみて気になる地域、活動団体、人などがあれば教えて下さい。

ライプチヒ旧東ドイツ

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交流してみたい街の一つが、東ドイツライプチヒです。既に向こうから、行き来してくれてるんですが、ベルリンが現代アートのお陰ででバーンと地価が上がって、若い作家が住めなくなったそうなんですね。それでライプチヒに住むようになったらしいんです。

「ごちゃごちゃしたところが面白い」と若いアーチストが入って人気が出たら、大手が買い占めてバーンと値上がって、というジェントリフィケーション的なことが尾道でも起きる可能性があります。尾道の場合は車が入らないので、斜面地の地価はそうそう変わらないとは思います。しかし商店街などの平地は高くなりました。いまは昔からの商店に若い子が入れています。でも将来、大手チェーンしか入れないような場所になって欲しくなくて。そこをどう食い止めるか。

ライプチヒにもうちのような団体があって、地価が上がらないようにコントロールしているようです。たとえば物件を借り上げて家賃が変わらないようにするとか。若者や個人が動きやすい状況を保つ施策が行われているらしいんですよ。そういう話の会をまたやりたいな、交流したいなと思います。

参考)memo.アトリエ 三角堂 - 雑記・備忘録:The situation about Leipzig.

sankakudo.blog.fc2.com

SUUMO ジャーナル:ドイツ中部の都市ライプツィヒで空き家が「子連れオフィス」に

suumo.jp

台湾

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台湾は、行政を中心に古いものを守ろうという動きが盛んです。

台南では古い建具や家具を行政がストックしているんです。一点一点すべてにバーコードがついていて、ピッと読み取ると、建具のサイズが全部表示されるんです。図書館みたいに管理されていて、どこかで「リノベーションするのに、この位の大きさの建具が欲しいんです」と要望が上がってきたら、すぐ出せるようになっている。

Q:そういう倉庫があるんですか?

あるんです。しかもストックを無料でくれるそうです。

(「空きP」のコアメンバーの)渡邊義孝さんが、そこへ行って調査したと言っていました。行政がやっているから税金で運営出来るんですね。向こうはそこまで発展してる。日本はかなり遅れてると思います。日本の文化庁となどと交流して欲しい。

台湾では工場の跡なども上手にリノベーションしているし、個人では難しい案件は行政が手がけます。

台湾の役所の方が、うちにヒアリングに来たことがあるんです。でも向こうの方がずっと進んでいて、逆にこちらが勉強させてもらいました。向こうのやり方をもっと詳しく知りたいと思うし、日本と比較して行政に投げつけたいという気持ちがあります。台湾には、日本より日本の良いものが残ってるんですよね。

もちろん台湾でも一筋縄ではいかない問題があります。行政が保存指定しても、建て替えて新築にしたい個人オーナーが自分の家を燃やしてしまうことがあるらしいんです。そういうことが横行してるそうです。そういう動きを若い子が食い止めようとする運動もある。

 

アマルフィ

f:id:yanvalou:20200215004447j:plainPhoto by Gregory Smirnov on Unsplash
ヨーロッパも参考になる街が多いところですが、尾道とよく似てるのが南イタリアアマルフィ海岸(写真)。海があって坂があって、ごちゃごちゃしている。「尾道姉妹都市になりたい」という希望が、向こうからあったくらいです。法政大学にアマルフィを研究している先生がいらっしゃって、話をしました。人口は分かりませんが、市街地の規模は同じくらいなんですよ。そして変な話ですが、向こうも尾道もトイレは汲み取り。それから複業の人が多いのも似ています。

Q: 尾道も複業の人、多いんですか?

うちの周りは複業者だらけですね。

もちろん会社に入れば生きていけますけど、クリエーターやアート系の人は普通に会社入りたくない人が多い。でも地方ではデザインとかアートの仕事だけでは生活できない。

都会だと家賃や物価が高いから、生活費を稼ぐのにたくさんバイトしないといけなかったりするじゃないですか。こっちは安いので、漫画家しながらゲストハウス手伝うとか、ゲストハウスの宿直しながら昼はカメラマンになるとか。複業で定期的な仕事をして最低限の生活費だけを稼ぐ。そしてできるだけ自分のやりたい活動に時間を費やす、という生活をしてる方が多いんです。だから二つも三つも仕事を持っている人が多いですね。


相思相愛の台湾と尾道

Q: 台湾のから大勢人が来るという話でしたが、どういうきっかけだと言っていましたっけ? 

ゲストハウスを経営するようになってから、台湾のお客さんがすごく多いことに気付いたんです。台南の若手の歌手がなぜか尾道でPV を作ったことが原因らしいんですよ。


盧廣仲 Crowd Lu 【天然的最好】 Official Music Video

向こうの人が先に尾道の面白さに気付いたんですね。そこが出発点になってぐるっと一廻りして、さらに台湾の人が増えた。並行して、台湾の自転車メーカー「ジャイアント」の施設(「ジャイアントストア尾道」)ができた。

giant-store.jp

尾道市自体もサイクリングで街を盛り上げていますが、同じようにサイクリングコースがある台中と「友好交流覚書」を締結しました瀬戸内しまなみ海道振興協議会と台湾サイクリスト協会も姉妹自転車道協定を締結しています)。台中の市長さんも来て下さって、市ぐるみでお付き合いしている。それから私たちみたいに、個人レベルでわしゃわしゃ付き合ってるのもあるので、官民が並行して町をあげて「台湾、台湾」となっている感じです。たぶん台湾と尾道が似てるのでお互いに好きなんですね。

空き家や建築の話でいうと、NPO のコアメンバーの渡邉(義孝)さんが、たまたま知り合いを介して台湾に残っている日式建築の現地の研究会に入ったのは大きいです。渡邉さんが台湾に行き出したのはつい数年前からなんですけど、現地の建築系の話は渡邉さんからよく聞いていたんですよ。

Q:以前台北にある尾道のような場所に泊まったことがあるんです。きっと気に入ると思いますよ。

www.yanvalou.yokohama

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 (写真を見て)家に木がまとわりついていますね。向こうでは木には神様がいると言われていて、切らずに耐震をちゃんとしながら保存してるんです。これは日本にはないところだなと思って。日本ではバツバツ切っちゃってますよね。

 

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Q:尾道ではライター・イン・レジデンスに先駆けて、アート関係のレジデンスも行われていますよね。それから2020年の「ひろしまトリエンナーレ」に空き家再生プロジェクトが参加しているという話。尾道とアートとの絡みというのは?

いまは現代アートが盛んですけど、尾道では文人墨客が江戸時代からずっと泊まっていたんですね。有名無名いろんな方が昔から好んで住んでいた。それが現代アートになったという感じですね。

アーチストには古い不便な感じを面白がれる人が多くて、彼らが新しい価値観を見出してくれている。便利で快適だけが良いんじゃない。便利で快適なものがメジャーになりすぎている時代だから、ちょっと不便で面白いところに敢えて注目してくれている部分はあるのかな、という気がしますね。

「類は友を呼ぶ」じゃないですけど、アーチストつながりで別の外国人アーチストが観に来たりとか。尾道はそういうことがよくあって、さまざまな人が遠方から来てくれます。

Q: 海外はどの辺りの国が多いですか?

本当にいろいろですね。マレーシア、フランス、ペルーとかカナダ、東ドイツ、オーストラリアの人もいます。

Q: アジア圏はあまり多くない?

マレーシアの人くらいかな。シュシ・スライマン(Shooshie Sulaiman)さんといって、ちゃんと日本のギャラリーがついている人です。彼女はアートだけで食べています。

→シュシ・スライマン(Shooshie Sulaiman)の活動を紹介したページ

bijutsutecho.com

観光や仕事の方は来ますが、アート絡みだとまだ少ないかな。台湾の人も来ますが、それはアート関係の人が何かの絡みで呼んできたという感じではありますね。アジアの人は、日本よりヨーロッパに憧れがあるのかも知れません。

 

長い記事でしたが、楽しんで頂けたでしょうか。
尾道シリーズ、まだつづきます。面白すぎて、書き切れないんです。