ども。檀原(@yanvlou)です。
ここ何回か尾道の話がつづいています。
つづけて書いているのは「面白いところだから是非紹介したい」という気持ちと「ぜひライター・イン・レジデンスを体験して欲しい」という考えからです。
尾道でレジデンスが開かれるようになった理由に関しては、過去のエントリーで触れました。
僕がライター・イン・レジデンスを広めたい理由
レジデンスに関して個人的な話をすると、僕は諸外国のように参加するのに審査があり、かつ滞在中の成果物の提出義務がある代わりに、参加費を外部の団体に助成してもらえる(その可能性が少なくない)というシステムに憧れています。
このシステムが好きなのは、「何部売った」とか「受賞歴は?」などといった基準ではなく、審査員の判断で参加できるか否か決まるからです。
売れる本と良い本はイコールではありません。
売れないから質の低い本という訳ではないし、売れているから良書という訳でもない。
賞の多くは「これを受賞作にしたら売れまくってくれるにちがいない」という出版社のマーケティング戦略が折り込まれています。
その証拠に2年、3年とつづけて同じ出版社から受賞作が出ることは、まずありません。
受賞は持ち回りです。
さらにノンフィクションの場合は、選んだテーマで受賞(あるいは候補作なるか)の可否が決まってしまう風潮があるように見受けられます。
そういう「不純物」を排除して、純粋に自分の書いたものが一定水準以上に達してるかどうか。
日本でも欧米のようなレジデンスが始まれば、客観的に自分の著作の程度を測ってもらえる日が来るかも知れません。
その大前提として、ライター・イン・レジデンスそのものの認知が上がらないと話になりません。
現状尾道のレジデンスはまだ応募者が少ないので、審査して参加者をふるい落とす段階に来ていません(ただ時間をつくってわざわざ1週間参加する人たちなので、それ相当の面子が集まっているようです)。
それでも尾道の話をするのは、尾道のレジデンスが知れ渡れば、ほかの地域でもレジデンス事業に参入する団体が現れるかも知れないと期待するからです。
レジデンス中仕事場にしていた「みはらし亭」のカフェスペース
今回一緒に参加した書き手たち
簡単になりますが、今回同時期に参加した2名の書き手をご紹介します。
加納土さん
加納さんは若干25歳ですが、これからブレイクしそうな映画監督です。
「シングルマザーの母の呼びかけで始まった共同保育」という自分自身の育った環境を取材した「沈没家族」で、注目を集めました。
この作品は大学の卒業制作でしたが、「PFFアワード2017 審査員特別賞」を取っています。
再編集したバージョンが『沈没家族 劇場版』として、昨春公開されました。
今回のレジデンスですが、単行本の執筆のためお籠もりに来たとのこと。今春東京の「ポレポレ東中野」という映画館での上映に当て込んで、出版社から依頼されたのだそうです。
加納さんとは、尾道の街角でばったり遭遇することがちょくちょくあり、「行動パターンが似てますね」と言い合いました。
偶然にも、来ていた上着も一緒でした。
鹿紙路(しかがみ みち)さん
小学校の頃から小説を書いていた、という同人作家さんです。
ちょうど仕事を辞めたタイミングで時間があったので、今回のレジデンスに参加したとのこと。
そう言えば主催者の豊田さんが「みんな忙しくて、1週間空けられるライターさんは少ないのよ。第1回は2週間(3週間と言っていたかも。記憶が曖昧)で募集したけど、応募が全然なかった」と言っていましたね。
「旅と仕事」「暮らすように旅をする」がトレンドの筈なのに、このムーブメントの主役たちは違う方向を向いているようです。個人的に残念です。
鹿紙さんは「顔出し NG」なので、写真はありません。
参加2日目、豊田さんの案内で尾道ツアーしたときの様子です。
このツアーで尾道の奥深さの一端に触れることが出来ました。
ライターということでお約束ですが、尾道時代の林芙美子の書斎を再現した尾道文学館の部屋なぞ見物したりもしました。
こちらは交流会の様子。
そうそう。
昨年の参加者が地元の新聞に取り上げられたという話を書きましたが、じつは僕らも地元のテレビ局で紹介されました(新聞には載らなかった模様)。
きちんと取材してもらえて嬉しかった。
今回のレジデンスであてがわれた部屋。生活感丸出しで御免。
で、結局「参加しただけの価値はあったのか?」という話ですが、直接執筆の役に立つ訳ではありません。
ただふだん自分の住んでいる場所とまったく違う環境なので、言語化しづらい刺激の蓄積がありました。
それから台湾関係の人脈ができたのも、自分的には大きかったです。
今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!