ども。檀原(@yanvalou)です。
先日「東京からいちばん近い棚田」ということで、房総半島の棚田に輪行サイクリングしたことを書きました。
この小旅行の下調べをしたときに気がついたのですが、じつは房総半島には、日本に5つしかない捕鯨基地のうちのひとつがあるんですね。
これは興味深い!
折しも7月と8月は捕鯨シーズン。
通年捕っているのかと思ったら、じつは操業は2ヶ月間だけなのです。
ちなみに今年は7月14日が解禁日だったとのこと。
和田浦地域センターの前にあるシロナガスクジラの全身骨格。恐竜の骨にしか見えません。
シーズンに併せ7月27日〜28日に千葉県南房総市の「和田地域センター」で「第十回和田浦クジラゼミ」というものが行われるというので参加しました。
*見出しが多いので、はじめて目次を導入してみました。
「クジラゼミ」で聞いた、欧米人にとって不都合な事実
「クジラゼミ」は地元のNPO法人が主催しています。
今回は10回目だそうですが、ふたりの方がお話されました。
参加者は約50名。若い女性も5名ほど見かけました。
メディア関係者もいたとはいえ、妙に熱心な方が多く、質疑応答のレベルが高度でびっくりしました。
「捕っていいクジラ」が存在する理由に唖然とする
捕鯨基地のある和田浦では、日本沿岸で捉まえた年間26頭のツチクジラが、水揚げされています。
広く知られているように、調査捕鯨では厳しく捕獲頭数の制限が行われているのですが、ツチクジラに関しては制限の適用外なのだそうです。
理由がふるっていて、「欧米人の漁場にツチクジラが棲息していないため、その存在を知らなかったから」だそうです。
ツチクジラは、主に日本近海に棲息しているクジラなのです。
その存在を国際社会に隠している訳ではないそうなのですが、国際捕鯨委員会(IWC)などは「自分たちのところにいないのなら関係ない」というダブルスタンダードを働かせているようなのです。
「クジラはほ乳類で、我々のような知的生命体なので食べるなんてとんでもない」
これが反捕鯨国の意見だったと思うのですが、一体どうなっているのでしょうね。
欧米が捕鯨をやめたのは、魚油を使うようになったから
クジラゼミ会場からは、海が間近に見えました
広く知られている通り、欧米各国が反捕鯨に動いているのは、自分たちが鯨を捕らなくなったからです。
かつては欧米でも捕鯨は行われており、というより、自分たちの領海を離れて北極海での捕鯨をはじめたのは北欧諸国です。
彼らは鯨の肉ではなく、油が欲しくて捕鯨をつづけていました。
鯨油は工業機械の脱脂油や潤滑油、皮革用の洗剤、ワックス、ろうそく、マーガリン、ショートニングなどの原料でした。
変わったところでは、ダイナマイトの原料となるニトログリセリンにも使われていたそうです。
しかし、たとえ捕鯨をやめても、油自体は必要なはず。
どうやってこの問題をクリアしたのでしょうか?
僕は「きっと石油化学製品で代替しているのだろう」と思っていたのですが、事実は違います。
ここで登場するのが、フィッシュミール(以下「ミール」)。いわゆる「魚粉」です。
イワシ、サンマ、ニシン、スケトウダラなどの魚を原料とし、養殖魚のエサや家畜の飼料、それから畑の有機肥料として使用されています。
とくにアメリカでは、家畜のエサの7割がミールなのだそうです。
ミールは、煮熟したあと圧搾機で脂と水を分離し、乾燥させるという工程をとります。このとき搾り取った脂(油)が「魚油」で、この魚油が鯨油の代わりとして使われるようになったのです。
ミールは比較的新しい飼料です。
昔はありませんでした。
新規開発で登場した飼料によって、(少なくとも欧米では)鯨油が過去のものになったのでした。
欧米の漁業関係者によるイルカ殺し
マダライルカの頭骨
しばしば日本のイルカ・クジラ漁は、国際社会の激しいバッシングに遭います。
しかし今回の「クジラゼミ」で知ったのですが、欧米人は年間58.6万トンものイルカを殺戮しているそうです。
どういうことかというと、ツナ缶用のキハダマグロ漁では巨大な網が張られるのですが、しばしばマグロと一緒にイルカも網に掛かってしまうのだそうです。そして掛かったイルカは、「作業の邪魔」と、あっさり殺処分されるというのです。その総量が年間58.6万トンに及ぶのでした。
殺されたイルカは、もちろん調査捕鯨のように生態系調査はされません。
犬死にです。
なんと言うことでしょう。
捕獲枠算出方式が謎すぎる件
夕闇迫る和田漁港
調査捕鯨における捕鯨枠は、国際捕鯨委員会(IWC)が計算に基づいて算出しています。
しかしその算出根拠が、さっぱり理解出来ませんでした。
これはなかばブラックボックス化の様相を呈しているようです。
すべての計算は、目視によるクジラの頭数調査が基準になっているのですが、日本海では十分に実施されていないとのこと。
「きちんと実施されれば、IWC が主張している頭数よりも多いはず」と庄司社長は主張します。
しかしこの調査が一向に実施される気配がないのです。
「実施されるようになれば、捕獲枠は増えるものと期待しています」
「自分たちは、(調査捕鯨ではなく)ふつうに漁業がやりたいんだ」
と庄司社長は言います。
先住民生存捕鯨(RMP)の問題
長くなるので詳しく書きませんが、先住民生存捕鯨(RMP)の問題にも驚きました。
IWCは、一部の先住民に対して、「文化を守る」という観点から捕鯨を許しているそうです。
しかし捕鯨を認められている先住民のなかには、機械を使った近代的な捕鯨を実施しているところもあり、文化や伝統から乖離している現状があるそうです。
にも関わらずその現状は黙殺され、日本の捕鯨はバッシングされるという矛盾。
ちなみに日本の捕鯨は「近代化されている」という理由により、RMPとして認められていません。
捕鯨の町で鯨肉を食す
せっかく捕鯨基地のある和田浦に来たのですから、クジラ肉に挑戦しました。
鯨肉ですが、小学校の給食のときに、なんどか出たことがあります。
しかし「黒くて硬くて、ちっともおいしくない」という印象が残っています。
とは言え、和田浦に来て鯨を食べないという手はありません。
果たして和田の鯨は、悪い印象を覆してくれるでしょうか?
和田浦には鯨肉を食べさせる店が何軒かあります。
今回立ち寄ったのは
の2店。
「さかな」では刺身を、「ピーマン」では鯨カツを頂きました。
晩ご飯にクジラを食す
「さかな」ですが、カウンターと座敷の小さな店で、和田の漁港に面しています。ちょうど地元の漁師と思しき三人連れの男性客が、カウンターで飲んでいました。店構えからして「地元民御用達」という感じで、料理に期待が持てます。
出てきたのは左から「ツチクジラの刺身」「ミンククジラの刺身」「ミンククジラの皮の刺身」。
若干身の下のツマに赤い体液が沁みだしており、生々しさを感じさせます。
やはり魚とは、なにかがちがうようです。
ええい、ままよ。
「えいっ」とばかりに口に放り込んでみました。
予想外のおいしさに、驚きました!
文字通り、とろけるようなのです。
おかみさんに「予想外のおいしさでびっくりしました!」と伝えたところ、満面の笑みが返ってきました。
とくにおいしいと思ったのは、ミンク。
おかみさんの話によると、人気があるのは地元産のツチクジラだそうですが、こちらは少々べちゃっとした食感で、個人的には張りのあるミンクの舌触りの方が好きです。
刺身ばかりでなく、皮も乙です。
皮は多量の脂を含んでいるため、よく絞ってからでないと食べられないとのことでした。
ランチで鯨カツを食す
翌日、朝の「クジラゼミ」受講後、ピーマンで鯨カツにチャレンジしました。
自分の親世代は、鯨カツに郷愁を覚えるようです。
刺身は大当たりでしたが、カツはどうでしょうか?
ピーマンも小さな店ですが、外房を縦断する国道128号線(といっても片側一車線の田舎道です)に面しているため、観光客でも入れる気安さに溢れています。
この日も鯨目当てのグループが何組か来ており、規模の割に流行っているようでした。
これが鯨カツです。
頬張ってみたところ、まるでこしあんのようにねっとりしています。初めての食感です。
素直に「おいしい」と言える味でした。
これはかなり良質な食材ではないでしょうか?
日本の鯨食文化――世界に誇るべき“究極の創意工夫”(祥伝社新書233)
まとめ
戦後のある時期まで、その値段の安さから「庶民の味」と言われていた鯨肉。しかし供給量が少なくなったいま、かつてのような価格を実現することは難しいでしょう。「商業捕鯨が復活した」と言っても、鶏肉の値段には敵いそうもありません。珍味として賞味していく道しかないでしょう。
「ダメなものはダメ」という国際圧力に押され、鯨食は微妙な位置に追いやられました。
「食べると海外から反感買うし、安くはないし、国際人として食べない方が無難」という認識が、浸透しつつあります。
しかしさまざまな事情を鑑み、捕鯨の町に出向いてみると、考え方が変わると思います。
和田の漁師たちの守護者である竜宮様
近いうちに外国人観光客をガイドして、鯨肉試食ツアーをしてみたいですね。
どんな反応が返ってくるでしょうか。
今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!