メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

地べたという異界(その2)

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ども。檀原(@yanvalou)です。

昨日アップした「地べたという異界」のつづきです。

スカウト

どこかで聞いたような話になるが、ホームレス相手に偽装結婚を持ちかけるグループが出没し、関内駅横浜駅周辺で勧誘活動を行っているという。

Nさんも声がけされた一人で、横浜スタジアム脇で野宿していたところ、年配の男性からスカウトされたそうだ。2015年の1月か2月のことだという。

その時期のNさんは3塁側のスロープを上がった5番ゲートの辺りで、寒さに縮こまりながら眠っていた。すると身体をとんとん叩く者がある。
「寝てるところ悪いね」
見上げたところ、年配の男性が立っている。冷たく張りつめた空気のなかで、男性の吐く息が白い。
「寒くないの、こんな所で寝てて?」
「いや、布団かぶっているんで大丈夫です」
「お腹減ってない?」
「ご飯食べたし、減ってないですよ。いま何時くらいですか?」
「1時くらいかな。よかったら、キミに頼みたいことがあるからファミレスにでも行こうよ。ご馳走するから」
「いいけど、ここで良かったら話して下さいよ」
「じつはこの辺りに住んでる人の所に廻ってるんだけど。じつは彼女、僕の奥さんなんだよ」
ふと視線を脇にやったところ、女の人がいた。
「僕の妻はフィリピン人なんだ。彼女の友達がいるんだけど、キミ、独身でしょ? 独身だよね、もちろん」
「独身ですよ。こんな所にいるんだから」
「その友達と偽装結婚してくれないか? お礼はちゃんとするよ」
「いくらくれるんですか?」
最初に5、6万。そのあとも月々5、6万払ってくれるという。

N さんの名前を伏せ字にしているのは、苗字が珍しいからである。安易な仮名にするのは本名とのギャップが大きくて気持ちが悪い。かといって安易に本名を晒せば、身元が特定されてしまう怖れがある。Nさんは路上暮らしだが、離婚した妻と子供たちは旧姓を名乗っている。なにか問題があったときに、名前が出ると迷惑を掛けてしまうかもしれない。
偽装結婚の場合も同じだ。万が一ニュースなどで報道されたら、かなりまずい。それに上手くいくとも思えない。だからNさんは断った。

後日この件を例の刑事に伝えたところ、笑われて「別にその情報はいいや」と一蹴されたという。警察にとって魅力的な案件ではないらしい。

スカウトに来るのは偽装結婚だけではない。宗教や建設現場関係の手配師が来ることもある。

* * *

いかがでしたか。

普段我々が行き来する繁華街の駅前。しかし立場が違えば、世界が一変します。
Nさんの話を聞いて「世界は無数のレイヤーが折り重なって出来ている」と実感しました。

同じ場所に立っていても、社会的な立場が違えばまったく違う景色が広がっています。
頭では分かっていることですが、その事実を突きつけられました。

今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!