ども。檀原(@yanvalou)です。
近年のライター人気の高まりとともに、オンラインの「ライターサロン」や「ライターコミュニティー」の存在がすっかり当たり前のものとなりました。
しかしその影で30年もつづいた老舗ライター団体が今年(2023年)3月いっぱいで解散していたことを知り、少なからず驚いています。
●6千人ものライターを抱えた老舗団体
その団体の名は「東京ライターズバンク(http://www.masukomi-kakekomi.com/ *現在リンク切れ)」。
紙の時代からライターを続けている人であれば、一度ならず名前を聞いたことがあるはずです。逆にここ数年の間にクラウドソーシングから始めた人には聞き覚えがないと思います。
「マスコミ駆け込みクラブ(東京ライターズバンク)」、先月いっぱいで解散していたのか。
— 檀原照和【新著絶賛取材中】 (@yanvalou) 2023年4月12日
▼https://t.co/AJTOpLgUzg
一度も利用したことはないが、30年も続いた老舗だけに勿体ない。
とは言え、「2022年のご依頼件数は、なんと1年で11件でした」という惨状だったそうだからやむなしか。
この団体は元・朝日新聞経済部記者の故・児玉進氏を中心に、約30人のマスコミOBの話し合いで誕生したそうで、発足は1993年11月。運営は児玉さんが一人で切り回していました。最盛期には「プロのライターが6,000人以上登録」と唄うほどの盛況ぶりだったといいます。
事実会員だったという方が2006年に書いたブログによると……
東京ライターズバンクというのはNPO法人「マスコミ駆け込みクラブ」の傘下団体で、代表のK氏ひとりで運営している、ライター斡旋組織。
会員は4000人、正会員は1500人程度(いずれも公称)で、様々な分野のライターさんが会員として登録されており、クライアントも大企業からわけのわからん個人まで様々で、仕事は結構あるので、ここのみに頼らないライターにとってはいい団体だった。
と紹介されています。
吉田典史氏の『稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版 2008年)には
現在、「東京ライターズバンク」は、商社や情報機器メーカー、百貨店などとタイアップして、さまざまなニュービジネスを展開中です。
そのうちの一つに、商社や百貨店とのタイアップで『著書制作ギフト券』(仮称)を商品化しようとしています。
これは、お世話になっている人にお歳暮やお中元、冠婚葬祭などの贈答品として贈るギフト券です。 受け取った人は、ゴーストライターを起用して、自分史などの本を発行できるのです。
いま、お歳暮やお中元にギフト券を贈るケースが増えています。 その需要を見越して企画化されたようです。
とあります。意欲的な取り組みにチャレンジしようとしていたことが伺えます。
ではなぜそんな団体が解散してしまったのでしょうか?
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●原因1
「東京ライターズバンク」には会員に仕事を斡旋するシステムがありました。元会員氏はこのシステムについて
自分が正会員として加入した当時のシステムは、K氏の所にくる一日3件程度の仕事をメルマガで会員に流して、自分の出来る、あるいは気に入った案件があればライターがその案件に応募し(まずK氏に)、K氏から依頼者の情報と内容が書かれたメールが送られ、初めてライターが直接クライアントに連絡を取る仕組み。
もちろん、商談が成立するか否かはケースバイケース。
商談が成立すれば、仕事をすることになり、報酬が支払われたらその10%をK氏に上納する、という仕組みだった。
と記しています。
「東京ライターズバンク」とは別のライターコミュニティーでも話を聞きました。その方が言うには
詳細は省きますが、このシステムは、メルマガや会員サイトなどで公開される求人案件に興味をもった会員が立候補し、運営者を介して両者が合意することで成り立ちます。
案件はクライアントと運営者との個人的信用に裏付けられているので、詐欺まがいのものが紛れ込む余地は原則的にありません。
依頼する側は出版社、新聞社、大手企業など多彩。案件のほとんどが紙媒体でした。提示された原稿料、ボリューム、納期などで「いける」と判断すれば自由に応募できます。
ただし、成約した場合は納品後に既定のパーセンテージの紹介料を運営者に振り込むのが決まり。これをスルーしてしまう会員が続出し、運営に支障をきたし始めているとかつて運営者に聞いたことがあります。
だそうです。
金銭トラブルの常習化が破滅を招くひとつの要因だったのですね。
●原因2
元会員氏によると、あるとき運営者が「ソフトバンクと提携して新システムを開発します」と宣言。これが崩壊の直接的な引き金になったようです。
ソフトバンクとは直接関係ない携帯電話代理会社との提携で、しかも携帯をソフトバンクの機種に新規で契約しなければならず、料金プランは何故かソフトバンクのものではなく、そこの代理店が独自に作成した「マスコミフォン」なるプランで、一律基本料金¥5400(だったかな?)。ソフトバンクモバイルの割引は一切適用されず(もちろん予想外割も)、ナンバーポータビリティも未対応で通話料も会員同士のみ無料という、非常に胡散臭いシステムを押し付けてきた。
その結果、人心が離れていったことが没落の原因になったということです。
会員にしてみれば「マスコミフォン」にしてもなんのメリットもない訳で、人が離れていくのは分かります。
歴史のある組織の崩壊は、案外このような「無理強い」から始まるのかもしれません。
今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!