メケメケ

メケメケ

町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

僕の見たある日系人ファミリー

 

ども。檀原(@yanvalou)です。

2020年に以下のような記事をポストしました。

www.yanvalou.yokohama

じつはこの案件、ほそぼそと取材を続けています。なんと昨年、ロサンゼルスで宇野家の人たちと会うことができました。

日本文藝家協会の会報「日本文藝家協会ニュース」8月号の「会員通信」欄にそのときの体験を寄稿しています。

一般には公開されませんが、こっそりここで披露したいと思います。

 

血筋を刻み込む

揃いの黒Tシャツ姿の70人が「スシー(寿司)!」の合図で集合写真に収まった。昨年の9月。ロサンゼルスで行われた、とある日系人一族の集まりでの一コマである。新作取材の一巻として、僕はこの場に参加させてもらっていた。


 ▲2世から6世まで集まった在米ウノ・ファミリーの面々

日本であれば、親族の集まりは本家で行われることが多い。食事の準備や片づけなどに忙殺される嫁。だらだらと酒を飲む男たち。それほど会う機会のない人たちに囲まれて所在なくしている子供の顔。年毎のぐだぐだしたルーティン。

しかしこの家の人たちは、まったく違っていた。まず会場だ。ロスにある日系人博物館のイベントホールを借りていたのだ。それ以前にも日系人強制収容所の跡地で集まったことがあるなど、なんだか意識が高い。さらに僕を含めて3名の部外者も招かれていて、ずいぶんオープンな感じだった。

記念Tシャツや家紋入りタンブラーグラスの作成など、単なる親族の集まりにしては力が入っている。仕切っているのは有志による「実行委員会」で、カラー写真入りのパンフレットやタイムテーブルまで準備されている。パワーポイントを使った一族の歴史研究の発表まであったのには恐れ入った。僕自身も発表を頼まれてしまい、既に傍観者ではない。「所変われば品変わる」と言うが、変わりすぎだろう。それとも僕が知らないだけで、旧家や名家であれば、日本でも同じような状況なのだろうか?

当日の中心となったのは3世と4世で、3世が70代くらい、4世が40~50代くらいだった。家族ごとに固まって丸テーブルに座るのだが、会場の大きさと人数の多さが相まって結婚式場のようである。

個人的に印象深く感じたのは、Tシャツから家紋のタトゥーが覗いていた人が3人もいたことだった。服の下に彫り物が隠れていた人もいたかもしれない。だとしたらもっといたのだろう。彼らは名家でもなんでもない。ジャーナリストや活動家を何人か輩出していることを除けば、ふつうの家だ。そんな人たちが血筋を拠り所にしている姿に、なんだか感じるものがあった。

 

* * *

 

たぶんですが、アメリカには「本家」という概念がないのだと思います。英語には日本語のような「兄」とか「弟」という言葉がありませんし、よほどの名門でない限り「家を継ぐ」という感覚は薄いのでは?

イベント前日の午後には、前夜祭的な感じで食事会も行われました。

 

このタイミングでこの記事をポストしようと考えたのは

このタイミングでこの記事をポストしようと考えたのは、数日前、朝日ドットコムで以下のような記事を見かけたからです。

ptu.dreamlog.jp

ロサンゼルスのリトル東京が衰退の危機に瀕しているという内容です。実際商店やレストランは昭和の香りが漂うレトロな店構えが多く、敢えてそうしているのか、はたまた演出なのか、判断つきかねるケースがありました。


 ▲リンク先の朝日新聞の記事にも登場する老舗店「こう楽」


 ▲メニューはてらいのないオーソドックスな日本食。外国人向けではないのがポイント。


 ▲このポスターは演出なのでしょうけれど、店自体が良くも悪くも昭和臭い

 

リトル東京自体は典型的な日本人街という印象なのですが、集まってくる人たちがアニメファンなどややキッチュな感じで、横浜中華街のような観光地だと感じました。つまり「生活の場ではない」のです。

イケてる日本料理屋はソウテル(Sawtelle)という地区に集まっており、「フュージョン・ジャパニーズ」と呼ばれています。


 ▲ソウテルの町並み


 ▲ソウテルの日本料理屋の前には日本人の姿はありません

 ▲ソウテルの場所。サンタモニカ空港の近く。

リトル東京とソウテルの関係性は、古き良き横浜中華街とガチ中華が集まった池袋中華街の関係と似ていると思います。中華街も料理の日本化が進み、ガチ中華の登場で立場が難しくなってきました。現地人との同化がすすんだ結果、日系人の街であるリトル東京の存続も微妙です。出張や留学でL.A.に来た日本人は、ダイソーなどおなじみの店が進出しているソウテルの方に足を運ぶのではないでしょうか。

そんなこんなでほんのさわり程度ですが、僕の見た日系社会の表層をお伝えしました。

今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!