ども。檀原(@yanvalou)です。
先日 YouTubeで興味深い番組を見ました。
さんざんtweetしたので記事としてまとめたいと思います。
50年前のシンポジウムに敬意を表した、コロナ時代の SF シンポジウム
大阪万博が開催された1970年。日本で世界初のシンポジウムが開催されました。
第一回「国際SFシンポジウム」です。
冷戦下という状況にも関わらず、東西両陣営から SF作家や評論家達が集結したといいます。
アーサー・ C・クラークらの大物を迎えて催されたこの会議の実行委員長を努めたのが、『日本沈没』などで知られる小松左京でした。
コロナ禍で改めてパンデミック小説『復活の日』が注目され、 Netflixで『日本沈没 2020』が配信されるなど、小松左京が復活しつつあります。
そんななか小松の命日である7月26日にリモート環境で実施されたのが、「世界SF作家会議」です。
この会議では、人類がまさに直面している、未曾有の大問題「新型コロナウイルス感染症」に挑むのは、SF作家たち!
彼らは来る日も来る日も「未来」のことを考え続けてきた。まさに「未来のプロフェッショナル」である。
その膨大な知識と、豊かな想像力、一面クレイジーでもある妄想力で、日本を代表するSF作家たちが緊急会議を行い、アフターコロナの世界を語り尽くす!
▲「世界SF作家会議」公式サイト惹句より
司会はいとうせいこうと大森望。
出演は新井素子、冲方丁、藤井太洋、小川哲の四人。
さらにスペシャルゲストとして、アジア人として初めてヒューゴー賞を受賞した『三体』の劉慈欣がビデオ出演しました。
いったいどんなことが語られたのでしょうか?
SF作家ならではの鋭い想像力で、アフターコロナの世界を語り尽くす!
#1 オープニング〜作家がとらえたコロナ〜パンデミックと小説
みはじめた
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
世界SF作家会議https://t.co/86KWp81iAq
SF作家ならではの鋭い想像力で、アフターコロナの世界を語り尽くす!
出演は新井素子、冲方丁、藤井太洋、小川哲の5名。特別ゲストとして『三体』の劉慈欣氏がVTRで出演。
生方丁「コロナ危機で全人類が初めて同時に同じ危機を共有した。同時にそれぞれの国の素顔を、如実に垣間見ることができている」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
確かに。
確かに。全人類が同じ経験を同時に共有したのは人類史上初めてでしょう。
でも世界は一つにまとまらず、逆に分断が進みましたけどね……。
各国ごとにコロナへの施策が異なり、そこにお国柄が見て取れるというのはその通りです。
冲方丁
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
「今回のパンデミックは人類史に残る」
「人類の潜在的な危機も浮かび上がり、人類全体が始業式を迎えた」
御意。
新井素子
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
「パンデミックはいつか絶対来ると思っていたら、ああ、きちゃったな」
すごい割り切り方!
「この世界の狭さからして、どこかで伝染病が起こればパンデミックにならないわけがない」
確かに。
テッド・チャン
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
「フィクションでは、このような無能な政治家は描かれない」
爆笑。
SFのお約束として、作品内の政治家は総じて有能でリーダーシップに優れています。
これは人間側がしっかりしていないと「ウイルスvs人間」という対立の構図が弱まってしまうという作家たちの側の都合によるそうです。
小川哲「SFでパンデミックをメインに扱った事例は少ない」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
ゾンビウイルスのパンデミックは多い気がするけどなぁ。
あ、やっぱゾンビの話に言及した。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
作家の考えるウイルスは致死率が高い。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
コロナのように健康をではなく、日常を破壊するウイルスのデザインは今までのフィクションにはなかった。
冲方「コロナみたいな設定を考えても、今までだったら編集者からリアリティがないと言われただろう。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
ウイルスが人間を理解しすぎている。ずるい。
これよりすごいウイルスを考えるのは大変だ」
新井素子「そもそも自然界には、異常に致死率が高いウイルスは存在しない。宿主である人間が滅びると、寄生するウイルス自身も困るから。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
人間との共生が実現すると、ウイルスの毒性は弱まる。
これから流行るのは致死率が低いウイルスではないか」
大森「SFの文脈で言うと、今回のコロナ禍はパンデミックではなく侵略。構造として宇宙人が静かに入り込んで、徐々に勢力を広げていくような感じ」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
藤井太洋「ファーストコンタクトパニックものに近いですね。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
各国がどうすればいいか右往左往する」
「ファーストコンタクトパニックもの」というのは、宇宙人と人類がはじめて公式に出会う物語です。映画『未知との遭遇』が典型例と言えるでしょう。
冲方「交通が制限されると情報も減る。これが戦争のトリガーになる。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
情報が少ないと容易く相手を制御できると考えがち。
今のところアフターコロナは、荒れた世界に近づいているという実感がある」
小川「人間の習性として、誰かが悪者になって責任を取らないと納得しない。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
責任の主体がわからないまま、みんな目についたものを叩いている」
いとうせいこう「光化学スモッグの外出禁止の時と似ている。今後は自治体ごとに外出禁止がアナウンスされるようになるのだろう」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
#3 アフターコロナのトロッコ問題
小川
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
感染して健康被害を受けた人:100人
自粛で大きな経済的損失・娯楽の喪失を受けた人:100万人
どちらを優先すべきかというコロナのトロッコ問題
冲方「日本の文化においては病人を犠牲にしてきた。陰陽道の穢れの発想。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
今やってることは平安時代と一緒。
みんなで慎みましょう、穢れが広まっているから人と会わないように、とか平安時代の朝廷が言いそうなこと」
「慎みには一定の期間が定められている。その期間が過ぎれば無罪放免。お役御免。裟婆に出られる。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
不寛容を避けることが出来る。
今の日本はその赦しの部分がない」
大森「トロッコ問題なら、どこかで線引きすべき」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
小川「線引きすると政治家に責任が生じる。だからどちらにも気を使う。
自粛は解除しますけど東京アラートは鳴らしますよ、どっちにも気を配ってますよ、というサインを出す。
政治としてはそれが正解なのだろうが、世界をよりよくする為にはどうか」
大森「日本はブレーキとアクセル両方踏んでる。スウェーデンはあまりブレーキは踏んでない。各国それぞれ。最終的にどれが正しかったのかは、1年後に分かる。それを可視化しないから差別や恐れが」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
いとう「スウェーデン在住の人に聞いたら、毎日閣僚が延々と質問に応え続けている。国民が彼らを信じるのでなんとかなっている。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
寛容になれるかどうかは、本当に情報が大事。きちんと説明されれば寛容さが生まれる可能性はある」
藤井「スウェーデンは毎日同じ時間に記者会見している」
藤井「毎日3時から始まって9時まで続くこともあるというレベルの記者会見をしている」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
いとう「台湾もやってますね」
新井「日本人は喉元過ぎれば熱さを忘れる。だから時間が経つとずぶずぶ
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
になっていく」
いとう「平成のずぶずぶは令和でもずぶずぶ」
冲方「平安はありとあらゆることを記録に残してますから」
一同爆笑。
平安時代の公文章が残っているのに、つい数年前の公文章が見つからないというのは笑うしかありません。
#4 アフターコロナのSEX
藤井「今後も各種パンデミックが起こっていくと、ウイルスへの対処法が類型化され、タイプごとに有効な遺伝子治療が行われるかもしれない。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
その影響が生殖細胞に及んだ場合、人類が分化していく可能性がある。
生物学的に種が異なるため、子供が作れない相手が出現するかもしれない」
大森「あるウイルスを防御できる遺伝子操作を受けた子供と受けていない子供とでクラスが分かれたり、差別があったりということは起こるかもしれない」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
藤井「現実には貧富の差の方が、病気のかかりやすさの差につながる」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
#5 アフターコロナは………ない
新井「アフターコロナはない。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
数年後ワクチンができて、みんなソーシャルディスタンスを忘れる。その後変異した新種のコロナが出現。以下繰り返し」
冲方「社会は変化を受け入れる人間を優遇する。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
震災の時も大儲けした人間がいた。そういう人たちが社会を作ってきた。
人間は常に優遇される種とされない種に分かれてきた。
今後も満員電車族が過酷な状況で働く一方、リモート族が悠々とスマートに生きていく。ここでトロッコ問題が生まれてくる」
「スマートになることを放棄してみんなと一緒になるか、我々が豊かなら良いじゃないかと言い張るか。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
そういう人間のあり方が今後は変わるのか、変わらないのか」
いとう「精神的あるいは習慣的に違う種になることはありうるかもしれない」
冲方「経済状態、健康状態、栄養状態などが原因の差異が数百年間続けば、異なる種として固定化する。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
分岐してしまった種も含めて1つのコミュニティーを築く場所に、新たな人類の繁栄が生まれる。
ローマ帝国然り、モンゴル帝国然り、アメリカ然り」
#6 劉慈欣インタビュー
劉慈欣「この30年間世界は右肩上がりに発展してきた。しかし私たちは歴史の流れが予測不可能な出来事に遭遇する可能性を思い知らされた。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
とは言え、大規模な感染症の流行は人類史上何度も繰り返されてきた。
今後は突発的な出来事も予測できるかもしれない」
「今回は準備できていなかったが為に、技術的ブレイクスルーも災害になる可能性がある。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
現在予想外の出来事を考えているのはSF小説だけ。
コロナウイルスは拡大するまで時間的猶予があった。しかし仮に異星人が来た場合一夜にして全てが変わってしまうかもしれないが、誰一人として準備できていない」
「未来のあらゆる可能性に注意を払い、起こるかもしれない出来事に対して精神的・理論的な準備を整えておくべきです」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
大森「SFの専門家はUFOに冷淡な人が多い」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
新井「宇宙人に備えられるものならば、大抵のものには備えられる。頑張りましょう」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
#7 森泉岳士特別寄稿「アフターコロナのヒューマン」&共同宣言
ここで森泉岳志さんから寄稿された短編漫画が紹介されています。
#8 アフタートーク
大森「僕の中ではいとうさんはSF作家なんですよ。
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
『ノーライフキング』は今の状況を先取りしていますよね」
いとう「小松左京さんの『日本沈没』がリバイバルしている時にコロナが来た。沈没しかけた船でネズミが騒いでいるみたいだった」
— 檀原照和@ライター (@yanvalou) 2020年8月13日
大森「小松左京さんのパンデミックSF『復活の日』は今すごく売れてます」
いかがでしたでしょうか。
テレビやネット論壇の意見とは趣が異なり、知的な刺激が感じられたのではないでしょうか。
Twitter上でも評判が良いようです。
作家が豪華でびっくりしたhttps://t.co/hxGYVQrsoC
— ティアガ⚙ (@tamaplaza2) August 12, 2020
これは面白い。新井素子さんはライトノベルの走りのかたで地の文でこちらに語り掛けるタイプの文章始めたまさにラノベの始祖
— のま@石新刊予約中 (@zattanoma) August 16, 2020
#1 オープニング〜作家がとらえたコロナ〜パンデミックと小説【世界SF作家会議】 https://t.co/iUSKLDPVOF via @YouTube
新井素子さん目当てでYouTubeで世界SF作家会議見てるんだが噂通りぶっ飛ばしてて面白い。
— どぶ🐭 (@dobuyan) August 16, 2020
先日放送されたTV番組【世界SF作家会議】内で公開された森泉岳士さんの作品「アフターコロナのヒューマン」、『セリー』の前日譚?だった。紙でも読みたい…https://t.co/c8ZMcRTXIv
— おはるさん (@opalsan) August 15, 2020
「SF小説だけが、未来で遭遇する可能性のある予想外の出来事に真正面から向き合っている」
— Andy Ⅱ (@ko25and) August 12, 2020
なるほどねぇ、三体の内容や書いている背景を考えると、彼のここでの発言に重みがあると感じれる。
#6 劉慈欣インタビュー〜うけ【世界SF作家会議】 https://t.co/l6BdGPUlNd
「世界SF作家会議」
— たぬさん (@144tanusan) August 15, 2020
めっちゃくちゃ面白かった!
いとうせいこうさんの司会も素敵!
こういう温度の、構成の番組に出会えて嬉しい。
面白くて一気に全部見てしまった。藤井さんの話は特に理知的で小説家らしいと思った。大森さんがプロットみたいに話してた部分は小説であれば面白そうって思う。でも、実際は怖い。何かのメタファーとして成立するのはいつになるかと考えて、気が遠くなった。
— ヨトモ(QuiltTape) (@sleepbath88) August 15, 2020
世界SF作家会議https://t.co/LWbbiQfiYT
個人的には「ファーストコンタクトものと似ている」「遺伝子治療により、人類が分化するかも知れない」という藤井太洋さんの見解が面白かったです。
劉慈欣さんは、ちょうどいま『三体2』を読んでいるところですが、変な人にしかみえません……。
確かに「人が考えないことを考えている人がいる」ことこそ多様性であり、有事の際の危機管理になるのでしょうけれど、ここで宇宙人を持ってくると誤解を招きそうです。
みなさんはどう思いましたか。
今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!