銀粘土細工教室 Ru* 上原理子さん
2015年7月14日に取材した千葉県市川市の銀粘土細工教室「Ru*」の紹介文です。
お蔵入りしていたものを蔵出しいたします。
取材文のサンプルとして御覧下さい。
バブル崩壊後の「失われた20年」と呼ばれた時代に入った頃、「資格マニア」という言葉があった。本来、資格というのはなんらかの必要性があるからこそ取得していくものである。しかし資格を取って集めていくことそのものに無上の喜びを感じるタイプの人たちが、ひところは多かった。
自宅教室が百花繚乱の現在、資格を眠らせているひとたちは結構な割合になるのではないだろうか。ビジネスに直結する国家資格と異なり、趣味性が強い資格はどう活かしていいのか分かりづらいのだ。しかし一歩踏み出してしまえば、案外なんとでもなってしまうものである。
銀粘土細工教室「Ru*」を主催している上原理子先生も、資格を取った当初は教えることを全く考えていなかったという。
「元々シルバーが好きでしたが、彫金は本格的すぎると感じていました。偶々アートクレイの体験講座を受講したところ、自宅であっけないくらい手軽に出来ることが分かったんです。そのまま3年ほど通い続けましたね」。
作品見本の画像を見ればお分かりいただけると思うが、シルバークレイクラフトはかなり繊細なアクセサリーを製作することが可能だ。これはコルク粘土で整形した土台の上に、紐状に絞り出した銀粘土を巻きつけていくことで実現しているという。炉で800度に加熱して焼くと、コルク粘土が蒸発して土台部分が中空になり、硬化した銀の絞りが残る、という寸法である。
平たいペンダントの場合は型を作ってくり抜いたり、穴を空けたり、彫ったりして製作する。ペンダントトップの部分は細い粘土をつかって自作し本体との一体感を持たせるのもいいし、市販の丸カンを流用しても構わない。
何より素晴らしいのは、炉をつかわなくてもガスコンロやバーナーなど身近な家庭の器具で焼成することが可能だという点である。高温で焼成すると水分が飛び、純度99.9%の純銀に仕上がる。
上原先生からざっと説明を受けたところ、これなら自宅でも出来るかもしれない、と思えた。作っていくうちにハマっていくであろうことも想像に難くない。
教室に通い続けた上原先生は、腕をあげていった。まだ教えることは考えていなかったが、上達したら電気炉が欲しくなった。電気炉とアートクレイの資格はひも付けされており、電気炉がなければ資格は取れない。折角炉を買うのであれば、ついでに資格も取ってしまおう。そんな気軽な気持ちで上原先生はアートクレイシルバーの資格を取得したのだった。
そんな先生が教室を始めたのは、友人の言葉があったからだ。
「高いお金払ったんだから、教えてみれば?」
その一言がきっかけとなって、友人に教え始めたのだった。
現在定期的に教えている教室は5つあるそうだが、メインの教室は自宅だという。
「道具が一通り揃っていますし、30分くらいであれば切りの良い所まで延長できますしね。どの教室からも私の自宅がある市川まで30分くらいの距離です。生徒たちが来やすいのも自宅教室の強みですね」。
生徒はほとんどが女性である。ものづくりの好きな生徒さんが多く、クレイクラフトと並行しながらほかのクラフトも教わっているケースが多い(資格取得コースになると、この傾向が一層強まる)。こうした生徒さんは課題をきっちりこなす熱心なタイプだという。
興味深いことに、クレイクラフト1本に絞っている気楽な生徒さんには、ものづくりに熱心な生徒さんにはない柔軟な発想がみられるそうで、先生自身が気づきを得ることも少なくないとか。技術だけで語り尽くせないのも、ものづくりの醍醐味だろう。
とは言え、作品をたくさん作ってもやはりアクセサリー。身につけられる点数は限られている。人に見せないと張り合いがない。そんな生徒さんたちのために、「Ru*」では毎年1回市川の大型ショッピングセンター「ニッケコルトンプラザ」で作品展示会を行っている(希望者のみ)。さらに今冬には、展示販売会も計画しているという。
最後に自宅教室運営を考えている読者のために、上原先生からアドバイスをしていただいた。
「自宅教室で重要なのは、家族の理解ですね。教室でつかってしまい、子供たちがテレビを見れない、ご飯が食べられない、など家族に負担をかけると続けるのが大変です。教室と生活の間に一線引いた方がいいと思います」
「日常から離れてリフレッシュできる教室でありたい」と語る上原先生。「友人相手に小さく始めた」という教室が大きく成長したのには、きちんとした理由があるのだった。
Ru*(るー)
主催者:上原理子(うえはらりこ)
所在地: 千葉県市川市大野町3-201
http://www.ru-silver.com/