ども。檀原(@yanvalou)です。
なるだけ「です・ます体」で書くことを心掛けていますが、お疲れ中での更新ということもあり、以下、書き慣れている「である体」でお届けします。
仕事が一段落ついたので気分転換のため日帰り旅行に出かけた。
大抵の場合、逝く先は三浦半島だ。鎌倉、葉山、横須賀、三崎など見所が多い。
しかし今回向かったのは箱根方面だった。
ライター仕事というのは、やればやっただけリターンがあるという種類のものではない。
5千字とか1万字程度の短い記事であれば、たいていの場合まちがいなく掲載される。
しかし何年もかけて取材するタイプのノンフィクションの単行本の場合、ほんとうに割りが悪い。やってもやってもそれに見合う見返りがない。
だから膠着状態に陥ると、本当にメンタルをやられる。
そんなときはアルバイトに逃避するに限る。
時給、日給、請負のタスク仕事、なんでもいい。
きちんとやればやっただけのリターンがあれば、なんでも構わない。
きちんと時間や労働に比例する報酬があれば、精神的に落ち着く。
手元に現金があれば、精神的に安定もする。
そんなこんなで単行本執筆が落ち着いた段階で三週間ほどアルバイトした。
そのときたまたま赴いたのが湯河原や仙石原だった。
帰り道、高速道路から真鶴の夜景を見た。
以前から「ご当地小説」に興味があったので、川上弘美の小説「真鶴」(2006年)が思い浮かんだ。
「そうだ、真鶴に行ってみよう」
そう思い立ち、水曜日(つまり三日前)にふらりと真鶴に行ってきた。
川上弘美の作品世界では、『ついてくる者』という霊につきまとわれる幻聴・幻覚の土地なのだが、無論現実の真鶴はそんな場所ではない。
散歩がてら、なんとなく真鶴港まで歩いたところ、案外歩けてしまうことが分かり、そのまま有名観光地で真鶴岬の先端である「三ツ石」まで歩き通してしまった。
途中、琴ヶ浜でスキューバダイビングをしている人たちを見かける(じつは真鶴は日本のダイビング発祥の地)など、三浦半島や湘南あたりとはちがう種類の海洋文化を感じた。
本当は Airbnb で見つけた【宿泊出来る出版社】という触れ込みの「真鶴出版」を訪ねてみたかったのだが、あいにく2軒目の出店準備中ということで宿泊を受け付けていなかった。
仕方がないので隣り駅の湯河原まで遠征。
さいきんウェブで盛んに見かける外国人に人気の温泉宿「TheRyokanTokyo」に行ってきた。
率直に言って、湯船が小さすぎ、お湯も温泉風の色や臭いがなく物足りなかった。
この宿の売りはレストランや随所に施された日本趣味だ。
外国人にターゲットをしぼっているということもあり、温泉そのものには力を入れていないように感じられた。
よく言えば「選択と集中」ということになるのだろう。
実際、館内で見かけたのは外国人ばかりだった。
レストラン(というよりカフェに近い)には蔵書があり、好きなだけ居座って本やマンガを楽しむことが出来る。
選書はかなりセンスが良く、その傾向からおそらく40過ぎの人が選んでいるのではないかと感じた。
こういう場所では、知っている本よりも知らない本を試し読みして、世界を拡げるのが正解である。
なんとなく手に取ったのは、売野機子のマンガ「ルポルタージュ」だった。
2033年、近未来の日本。そこでは恋愛する者はマイノリティとなり、“飛ばし”結婚という、面倒事や痛みを伴わない男女のパートナーシップが一般化されていた。その象徴とも言える「非・恋愛コミューン」と呼ばれるシェアハウスが突如テロリストに襲撃され大勢の犠牲者が発生。中央新聞社会部記者・青枝聖は、テロ被害者のルポを書きながら恋愛に巻き込まれていく――。
という内容。
20人以上の名もなきテロの犠牲者たちのストーリーを、新聞記者が追っていく。
ライターであれば、ついつい興味を惹かれてしまう内容。
この「名もなき人々の人生を掬い上げる」という部分にこのブログとの共通点を感じ、紹介しようと思った。
「名もなき人々」と言ったものの、2巻まで読んだ段階では本来の意味での一般人が撮り上げられているわけではない。
「非・恋愛コミューン」を掲げるシェアハウスの発起人とか、新作映画の脚本を書くためにこのシェアハウスに住み込んだ人気脚本家とか、事件の舞台はちょっと特殊な人たちの巣窟になっていた感がある。
しかし事件の被害者の人生を同情を惹くための道具にしていないのには、共感出来る。
恋愛とルポルタージュ執筆(つまり「お仕事」)の2本の軸で成り立っている(主に)若い女性向きのマンガだが、あまり恋愛方面に偏らずに「お仕事」部分も現状通りの比重で描いてもらえるならば、ぜひこれからも読んでみたいものだ。
偉そうな書き方になったが、未婚者の増加、少子化、テロ、シェアハウス……など、いまどきの社会現象を上手にすくい取った興味深い作品であることは間違いない。
今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!