メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

受注したブックライティング案件が困ったちゃんな件

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ども檀原(@yanvalou)です。

昨年の8月、はじめて「ブックライティング」案件を受注しました。
この耳慣れない言葉ですが、いわゆる「ゴーストライティング」のことです。
数年前、某人気作曲家がゴーストライターに委託して曲作りをしていたことが露見し、世間が騒然としたことは記憶に新しいと思います。
あの事件を境にゴーストライターに光が当たるようになると共に、「イメージが悪い」ということで「ブックライティング」という新しい名称が好んで使われるようになったのです。

上記の案件は某若手映画監督の本で、僕は札幌にあるクリエイターやアーチスト専用の某宿泊施設に3週間缶詰になって1冊書き上げました。
(このお籠もりの話は有益だと思いますので、そのうち皆さんにシェアしたいと考えています)

まったくの未経験案件だったブックライティングですが、手探りしながらも無事納品出来て一安心。
で、「これからもコンスタントに受注出来ないだろうか」と考えていました。
すると運良く2件目を受注。
しかしこれが「なんだかなぁ」なのです。

原稿にできる材料がほとんどない!

今回の案件は情報商材販売から身を起こして、FX などの金融商品などに関わっている某社長のメッセージ本です。
受託したときの話では「社長に直接インタビュー出来るのは1回程度。しかしいままでの講演会の動画やインタビュー音源があるので原稿の材料は揃っています」という話でした。
担当者と新宿の喫茶店で打ち合わせ(社長本人は同席していません)したところ、「じつは社長が立ち上げた出版社でライター養成講座を開講しました。修了者の中からめぼしいライターに書いてもらう予定だったのですが、上がってきた原稿が満足のいくクオリティーではなかったため、急遽外注に出すことにしたんです」とのことでした。

さっそく資料(書籍4冊、テキストファイル数点)と前任ライターが書いたという原稿を送ってもらったのですが、その内容に驚きました。

「講演会の動画」というのが、「FX 流用講座」とか「ダブルモニター環境の活用術」などといった本の内容と無関係なものばかりだったからです。

テキストファイルの方は社長の手による前書きの原稿と参照URL のリストだったのですが、会社の概要や実績ばかりでメッセージ本として使える箇所はゼロと言っても過言ではありません。
活用出来そうな資料といったら、社長が前回書いた書籍(2冊目に相当する本。今回の受託案件が3冊目になります)くらいしかなかったのです。

とは言え、まさか2冊目と3冊目を同じ内容にするわけにはいきません。流用出来る分量は自ずと決まってきます。もう「どっかーん」という感じです。

一応担当者から目次案は送られてきていましたが、この条件下で仕事するとしたら、キュレーションメディア同様、他人様が書いた文章を著作権に引っかからない程度にリライトするしかありません。
「現在の世情や IT と絡めた仕事術に関して僕の私見を入れても構わない」と言われているので、その通り自分の意見も盛り込んだとしましょう。事実上、この本は「社長の著作」という看板を掲げた僕の本です。
出されたお題(目次案)に応じて僕が自分の意見やリサーチ結果を書くのですから、ゴーストライティングでもブックライティングでもなく、完全な代筆です。ほぼ詐欺と言っても良いでしょう。

昨夏の映画監督の案件のときは12時間くらいインタビューさせていただき、なおかつ監督が業界紙に寄稿した3本の原稿や、内容に関連したメモ書きなどを頂いていたので充分な材料が揃っていました。
メールによる追加質問にも快く答えてもらうことが出来ていました。

今度の案件はあまりにもひどい。

かつて巨人の長嶋さんが本を出したとき、記者から「チョーさん、今度の本、どんな内容ですか?」と訊かれ「まだ読んでません」と答えたという話はあまりにも有名ですが、どうしてもこのエピソードが思い浮かんでしまいます。

ホリエモンくらい突き抜けていれば文句は言いませんが

参考資料の一つとしてホリエモン(社長は堀江氏のファンらしい)の「他動力」が送られてきたのですが、この本、本文中で堀江氏自身が明言しているとおり、ブックライターが書いているそうです。
しかも堀江氏はライターと顔を合わせることさえなかったのだとか。

しかし堀江氏の場合は確信犯です。
メルマガや各種媒体でのインタビュー、対談、 tweet など原稿にする膨大な材料が用意されています。
いわば漫画の原作者のような立場にあるわけで、「原作と作画を分業する漫画のように、本を書くときも分業制にした方が効率が良いと思う」と堂々と宣言しています。
ここまで堂々と「自分で書いていません」と言ってしまう人ですから、堀江氏の場合は突き抜けています。
彼は自分の正義を信じて実行しているだけですから、むしろ賞賛に値します。

翻って今回の僕の案件、なんでしょうね、これは。
ブックライティングを定期的に受注していれば、遅かれ速かれこの手の地雷案件に当たったであろうことは容易に予想出来ます。
むしろ初めての案件が今回のようでなくて良かった、と感謝するべきなのかも知れません。

笑ってしまうのが、担当者が何も分かっていないらしいということ。
使えない資料ばかり大量に送ってきたこと、前任者が書いた原稿を「原稿用紙換算で50枚」と言っていたのにも関わらず実際には32枚しかなかったこと、著作の内容が専門外で正誤をチェック出来ない程度の知識しか持ち合わせていないこと、など頼りないことこの上ないのです。
端的に言って「この人と仕事を続けても成長出来ないだろうな」と感じてしまいました。

単独作業の割合がひじょうに多いライターという仕事では、担当編集者の能力が商品のクオリティーを大きく左右します。
希望通りの担当者と必ずしもいっしょに仕事出来るとは限らないわけですが、しかしだからこそ最初のうちは出来る担当さんと働きたいものです。

今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!