メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

執筆の不確実性と速度の問題について

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ども。檀原(@yanvalou)です。

先週の土曜日に五反田のコワーキングスペースCONTENTZ」で行われた以下の勉強会に行ってきました。

6月17日、ライター交流会で登壇させていただきます「早く書くコツ」 | SATOYUMI.COM

togetter.com
司会は有限会社ノオトの宮脇淳さん。登壇者は石黒謙吾さん、佐藤友美(さとゆみ)さん。
お二人とも(そして司会の宮脇さんも)、売れっ子です。

まとめサイトの URLも貼っておきましたが、事細かにノウハウが明かされていましたし、勉強会後の交流会や二次会で個別に色々質問できましたから、ひじょうに有意義でした。

さて。
このときの会、とくに佐藤友美さんの方法論は完成度が高く、ケチの付けようがないほどすばらしいものでした。
で「早速やってみよう」と思い、1夜明けてその内容を反芻したとき、1点だけ引っかかることがありました。
それがこのエントリーのタイトルになっている「執筆の不確実性と速度の問題」です。
(※「1夜明けて」と書いているくせに、この原稿は2晩明けてから執筆しています w)

Webライターがしばしば口にする「1文字=1円でも、1時間で2,000文字書ければ時給2,000円」発言にも通じることなのですが、速度を追求するとキーボードとモニター以外の世界が消失していまいます。
しかしほどほどの速度で書くとき、突発的な閃きや気づきが起きた経験はありませんか?

佐藤さんの場合は「そういう不測の事態が起きないように予め完璧な準備を完了していて、執筆中はひたすらタイピングマシンに徹する」というスタイルを自分に強いているように見えます。

web ライターの場合は文字数が少ないので、閃きや気づきが訪れる間もなく、書き終わってしまうのでしょう。

しかし書籍を一冊書き下ろす場合、あるいはそこまでいかなくても1万字程度の記事を書く場合、書いている最中に閃きが起きることは多いと思うのです。
それはいくら下調べをしてもふっと出てくるもので、だからこそ「不測の事態」なのですが、それがあるからこそ原稿のクオリティーが上がるのだと僕は思っています。

この「気づき」ですが、書いていく中で対象への理解が深まることが前提になっています。
事前に資料集めしているときは「こういうことを知りたいのだが、その手の資料はどこにあるんだ?」と、猟犬モードで思考しています。
このときは相手の人間性について思いを巡らせても、発想の幅が狭まっています。

しかし何日も掛けてタイピングしながら相手の身上を文字化していくとき、つぎつぎとイメージが飛躍していくのです。このとき、いままで思いもしなかった疑問が浮かび上がってきて、その内のいくつかが内容を深める上で有用だったりします。
そうするとその部分は追加取材せざるを得なくなります。

たとえば僕は有名な「ヨコハマメリー」について書いたことがあるのですが、書いている途中で「そういえば、この人お風呂はどうしていたんだろう?」と疑問が湧いてきました。
そこで横浜市の中心部に位置する銭湯に片っ端から聞き込みして廻りました。

メリーさんのお風呂問題は、下調べの段階では考えもしなかったことです。
しかし指を動かしていると、こういうことが思い浮かびやすくなります。

執筆中はこういうことが何度も起きます(少なくとも僕の場合)。
これが「不測の事態」です。

佐藤さんの方法論は「〆切が決まっているタイトなスケジュールの中で、あと何時間で確実に完筆するか把握するためのメソッド」ですから、この「不測の事態」は単なるトラブルでしかありません。
度々起きるようではスケジュールが崩壊してしまいます。

逆に僕は、積極的に「不測の事態」が起きるように【如何にして“隙間“を作るのか】ということを意識しています(というか、意識していることに気がつきました)。「不測の事態」に対応することで内容が深化すると信じているからです。
この部分こそがライティングのもっともクリエイティブな部分だと思っているので、そこを捨ててしまうのはどうなんだろう、というのが率直な気持ちです。

しばしばノンフィクションライターは「取材すると事前の予想を裏切られることが多い。そこが醍醐味」といいますが、僕の場合はちがっていて「書き始めるまでは考えもしなかった方向に原稿が走って行くのが醍醐味」だと思っています。
ある意味、書く作業は自分の頭(発想)の限界を突破する作業です。

もっとも僕のやり方は時間があるからこそ出来る類のもので、タイトなスケジュール内で納品するのには向きません。
必然的に多忙な売れっ子ライターさんにはむずかしいと思うのですが、そこは金銭や時間とのバーターでしょうね。

ただ「こういうアプローチもあるんだ」と頭の片隅に置いておくと、若い書き手の役に立つかも、と思い文字にしてみました。

今日の記事は以上です。
またのお越しをお待ちしています。

追記:佐藤さんがこの日の内容に追記したメソッドをブログにあげているのを発見。
早く書くことの弊害も自覚されているらしく、今後は現在の7割のスピードで書くことを目指しているとのこと。
ただ意識しているポイントは僕とはちがうな、と。
文章が読み安すぎるので、流し読みさせないために、あえて文章に引っかかりをもたせる、というのはすごい。

satoyumi.com