ども。檀原(@yanvalou)です。
既に10日ほど経ってしまっているのですが、『新宿タイガー』というドキュメント映画を観てきました。
新宿タイガー(以下「タイガーさん」)は新宿の路上で見かける有名人です。僕も20年くらい前、歌舞伎町や新宿通りのあたりで何度も見かけたものでした。
ど派手な衣裳にタイガーマスクのお面。
まるではぐれ者のチンドン屋のようです。
この写真は2013年に「ビックロ」の店内で撮影しました。
珍しくマスクを外した姿で歩きまわっていました。
意外なことにタイガーさんはかなり饒舌です。
映画のなかで、彼は喋りまくります。
しかし肝心なこと、たとえば「なぜこの恰好でいるのか」という点に関して「神社の夜店でタイガーマスクのお面を見て直感で」と言うなど、説明が要領を得ません。
寝るとき以外、24時間あの恰好でいるというその執着も不可解で、訳が分からないまま受け入れるしかないという状態です。
映画「新宿タイガー」観てきた。近日中に横浜でもやるようだが、やっぱり新宿で観ないとね。
— 檀原照和_「白い孤影 ヨコハマメリー」発売中 (@yanvalou) April 1, 2019
街との関係性の映画だな、と思った。
拙著の主張と被るが、タイガーさんはメリーさん同様「24時間ずっとあの格好で居続ける事ができる」という理由で新聞配達の仕事を選んだのだろう。
それにしてもタイガーさんの周辺は年中無休のさくら祭りみたいだ。
— 檀原照和_「白い孤影 ヨコハマメリー」発売中 (@yanvalou) April 1, 2019
チラッと「アウトサイダーアーチスト」であることも仄めかされるが、世間的にはこの見方は受け入れられないのだろうか?
これがありになると、アートの敷居が下がるのだが。
タイガーさんほどではないにしても、ある程度大きな街であれば、どこにでも一癖も二癖もある人物というのはいるのではないでしょうか。
飲み屋で女優と語らうタイガーさんを観て、ふと思い出した人物がいます。
10年くらい前、最寄り駅である黄金町のカフェやバーにしばしば出没した「有名人」のひとりに、「南大門」さんという鉄を使ってオブジェをつくるアーチストがいました。
現在黄金町は「アートの町」として、イメージ刷新を図っていますが、それとは全くの無関係です。
年齢は60を越えていたでしょう。
1980年代が全盛期だった人物で、ビートたけしの番組などにもゲスト出演していたといいます。横浜ローカルな有名人のひとりに「ロコサトシ」というライブペインティングや壁画を得意とする絵描きがいますが、彼を見出したのが、なにを隠そう南大門さんだったということです。
南大門さんは「自称アーチスト」ではありません。その証拠に、横浜橋商店街と元町商店街には南大門さんがファサードを手がけた個人商店が一軒ずつ存在します。
飲み屋にも小作品を詰め込んだ袋を持ち込み、カウンターの上に拡げながら、一方的に解説を始めることがしょっちゅうありました。はっきり言うと、誰も聞いてはいませんでした。しかし彼の話は止まりません。
はじめは形だけ話を聞いていた店主や常連たちも、それがいつものことになるとげんなりします。南大門さんの止まらない話は、ほとんど街宣車のマイクパフォーマンスのようでした。
さらに強烈だったのは、まるで会話ができないことです。
南大門さんは相手の話を遮って、一方的に喋りまくります。だから会話のキャッチボールにならないのです。決して頭がおかしい訳ではありません。一応こちらの言うことを理解してはいます。しかし病的なまでに言葉のマシンガンが止まらないのです。
この面倒くさい人物は、黄金町一帯でかなり有名でした。彼の姿を見た途端、席を立って会計を済ませる客もいたくらいです。
そんな人物ではありましたが、1、2年すると姿を見せなくなりました。
一時期横浜橋商店街のカフェバーに出没していたそうですが、現在の消息は不明です。
映画の話に戻ります。
タイガーさんは大の映画好きで、気に入った女優と仲良くなって呑みに行くのが好きなようです。
女優たちも満更ではないらしく、何人もの女優がゴールデン街でタイガーさんと杯を重ねていました。
その親密ぶりから、長い交友が伺えます。この映画のためにセッティングした訳ではなさそうです。
もしこの女優たちとの絡みがなかったら、タイガーさんは南大門さんと同じ「面倒くさい人」以外の何者でもなかったでしょう。
映画の鑑賞後、タイガーさんにあって南大門さんに欠けていたものは何だったんだろうと考えてしまいました。
【2019.8.17 追記】
8月1日に新宿三丁目でタイガーさんと遭遇。写真を撮らせてもらいました。
とっつきづらさはあるものの、いい人なのでしょう。気軽に撮らせてくれました。
今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!