2015年に「みちのくアート巡礼CAMP」というツアー型の合宿のようなものに参加しました。
主催団体は東京を代表する演劇祭「F/T Tokyo」のディレクターだった相馬千秋氏率いる「芸術公舎」。
「東北から思考する、新進芸術家・企画者要請集中ワークショップ」
と題してアーティスト・企画者育成事業で、この年から毎年夏に行われています。
「巡礼」をテーマに、東北地方を巡回しながらワークショップを開催。フィールドワーク、リサーチ、講師陣との議論を通じて、自らの作品プラン・企画プランを練り上げ、震災後の東北へ、アートでの応答を試みる、というのがその内容です。
この企画は、文化庁の「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」委託事業で、日程や場所は以下の通りでした。
ここまでが前振りです。
このときいっしょに参加した東京芸大の学生(現在は同大学院グローバルアートプラクティス専攻)の村上愛佳の作品が、上野公園に展示されています。2017年4月17日~2018年2月20日頃までという長期展示です。
先日見てきたばかりですので、ご紹介したいと思います。
タイトルは「自由な女神」。
この作品は元々石巻市にあった女神像を移設したものです。
有名な石ノ森章太郎を記念した「石ノ森萬画館」のすぐそばにあったのですが、311で被災し、下部が大破しました。
痛々しい姿をさらしながらも同地に立っていたのですが、復興が進むにつれて邪魔になり、所有者であるパチンコ屋の倉庫に眠っていました。
その後紆余曲折を経て、村上さんが譲り受け、「作品」として展示するに至ったわけです。
たまたまですが、僕は石巻にあった頃のこの女神像を見ており、写真も撮っていました。それが「作品」として展示されることになったわけで、不思議な縁を感じます。
僕が石巻を訪れたのは震災の半年後。
瓦礫の撤去などだいぶ進んでいましたが、家々には被災の傷跡が生々しく、重機がフル稼働で障害物を撤去していました。住民が避難した家はゴミの捨て場のような様相を呈していました。
さて女神像ですが、「なぜこれがアートなのか」という部分に関しては、お手数ですが各自で検索して納得いくまで調べてください。
いわゆる「レディ・メイド」とよばれるタイプの作品で、「これをアートとして扱うべきか否か」という議論を起こすのが狙いの作品と言えます(アート業界的には「芸術の概念の拡張を試みる作品」ということになるのでしょう)。
知り合い、しかもまだ20代の学生の作品が上野公園に飾られるというのは滅多にないので思わず書いてしまいました。
今日の記事は以上です。
またのお越しを、お待ちしております!