メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

インタビュー音源の文字起こしに関する、いくつかの私的ノウハウ【前編】

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ども。檀原(@yanvalou)です。

数日前、某ライターさんがテープ起こしのノウハウをブログに書いているのを見ました。
それをみて自分視点で追加・捕捉したいことがあったので、公開しようと思います。

 【目次】
1.そもそもテープ起こしは必要か (前編)
2.正統的なテープ起こし方法 (前編)
3.音声認識を使う (後編)
4.自動化 (後編)

1.そもそもテープ起こしは必要か

のっけから正直に書いてしまいますが、ここ10年々くらいインタビュー取材をしてもテープ起こしはしていません。
外注に出しているわけではなく、音声記録のない状態で記事を書いているからです。
なぜか?

テープ起こしが上がるまで、待つ時間がもったいないからです。
テープ起こしのノウハウを書いた記事に「テープ起こし? いらないでしょ?」と書いているのを見たことがありません。しかし、やらなくても問題ありません
むしろやらない方が効率が良いと言えるでしょう。

ではテープ起こしをせずにどうやって記事を書くのか?

【その場でメモを取る】

これにつきます。

誰もがノートパソコンをもつようになった現在、講演会や取材中のメモをノーパソでカタカタとっている人を見かけることは珍しくなくなりました。
不要な会話を受け流し、重要な部分だけ書き残す。
これが一番効率の良い記録の仕方です。

とは言えノートパソコンをつかうと、せっかく話をする気になってくれている相手に警察の取調室や裁判所で感じるような、妙なプレッシャーを与えることになりかねません。

取材している側には伝わりづらいのですが、話をする側にとって、ノートパソコンでのメモ取りは取り調べを受けているような妙な居心地の悪さを感じさせるものです。

ここで生じる「見えない障壁」をどうするか。
別のテーマになるのでここでは書きませんが、なんとかする技術が必要となります。
この部分で悩みたくないのであれば、素直にインタビューを録音させて頂いてテープおこししましょう。

こう書くと初心者ライターは「一字一句正確に記録出来ないから、メモはまずいんじゃないですか?」
とか
「発言通り正確に書かないと、著作権的にまずいんじゃないですか?」
などと気にするかもしれません。
(少なくとも自分はそうでした)

後述しますが、インタビューの文字起こしは「ケバ取り」とか「整文」という作業を経ていく過程で、すこしずつ書き言葉の形に修正されていきます。
納品後、原稿を仕上げていく過程で事実関係の間違いや発言者の勘違いが判明した場合、その部分を直します。
また起承転結をもたせたり、話の流れを分かりやすくするために、話の順番を編集することも頻繁に行います。

したがって「一字一句正確に書くことにこだわっても意味がありません」。

もちろん内容を捏造したり、インタビュー相手の意に沿わない内容にすることは厳禁です。
しかし一字一句元の通りに書き起こすことにこだわっても、消耗するだけです。

 

それよりも効率を考えて、話の必要部分を正確に書きとめましょう。

 

じゃあ、テープ起こしはしなくていいの?

と訊かれそうですが、

  • 仕事としてテープリライターの業務を請け負いたい人
  • 憧れの人へのインタビューで、絶対に失敗したくない、万全を期したい人

 は、テープ起こしの技術があった方がよいと思います。
しかし一般論で言えば、テープ起こしは必要ないと感じます。

とは言え、記事が出来るまで「保険をかける意味で会話を録音しておく」ということには、もしかしたら意味があるかも知れません。

 

2.正統的なテープ起こし方法

現在はスマホ、もしくはICレコーダーで音声を記録するわけですが、mp3データを再生することさえ出来れば、一応テープ起こし出来ます。
つまり Mac ならQuickTime Player、Win なら Windows Media Player という OS 純正の付属アプリがあれば作業出来ます。

ただし効率が良いとは言えません。
やはり専用アプリがあると便利です。

【テープ起こしアプリに必要な機能】
  • 再生スピード調整
  • 一時停止からの再生再開の際、数秒前の位置に戻って再生出来る
  • (再生位置のマーキング機能=個人的にはいらないと思ってます)

僕は原則的に Macユーザーです。
ながらくテープ起こし用のアプリは Windows の世界にしかなく、Macユーザーは苦汁をなめていました。
そんな訳で Windowsで定番の「おこしやす2」をつかうためだけにWin機を引っ張り出してきたり、VMwareを立ち上げたりしていた時期もあります。

現在つかっている(というほど使ってませんが)のは ExpressScribe (有料)です。

www.nch.com.au


ほかに Transcriptions (有料)というアプリもあるようですが、自分的にはしっくりきませんでした。

Transcriptions

Transcriptions

  • David Haselberger
  • 仕事効率化
  • ¥360

どちらも数年前に探したものですから、2018年現在はもっとよいアプリが出ている可能性があります。
それぞれのアプリの使い方については、詳しく書いている方がいらっしゃるのでググって下さい。

ひとつだけ強調しておきたいのは、

手打ちで文字おこしする場合、フットペダルは必須

と言うことです。

フットペダルというのは、自動車のブレーキとかミシンの足踏みペダルのような形をした入力デバイスです。
パソコン用品店に行っても、まずお目に掛かることはありません。
しかし Amazonなどの通販では、かなり色々な種類を取り扱っています。

手入力だけでも作業出来ますが、フットペダルがあると効率がちがいます。

再生/一時停止 をフットペダルで操作するのです。

プロのテープリライター(テープ起こし職人をこう呼ぶ)はみんな三連のペダルを使っているらしく、
再生/一時停止に加えて早送りや巻き戻しを足で操作しているようです。
しかし三連ペダルはとにかく高価。
プロのリライターとして食べていくつもりがないのであれば、シングルペダルで充分です。

ちなみに僕が使っているのは、以下の2千円しないものです。

フットペダルを使う場合に注意することがあります。
それはアプリによっては、フットペダルに機能を割り当てられない場合があることです。
どういうことかというと再生や一時停止、早送りなどの動作をコンビネーションキー(キーボードのキーをふたつ以上同時に押すこと)でしか割り当てられないアプリがあるのです。
フットペダルの場合でも「フットペダル+Alt(Cmd)」などと出来る場合があるのかもしれませんが、それも面倒です。

  • フットペダルを単独で一回踏むと一時停止。
  • もう一度踏むと(数秒前の位置から)再生

となるアプリが理想です。

ExpressScribe はこの条件を満たしていました。

余談

かつてはテープ起こしでご飯が食べられたらしく、専門会社もいくつかあるようです。
たとえば僕の地元・横浜ではこんな会社があるようです。

voicefactory.net

第36回大宅壮一ノンフィクション賞受賞の稲泉連さん(母親もノンフィクション作家で、やはり大宅賞受賞者の久田惠さん)や、劇作家・小説家の岡田利規さん(第49回岸田國士戯曲賞、第2回大江健三郎賞受賞)は、テープ起こしで生計を立てていた時期があると聞いたことがあります。

アーティスト・インタビュー:岡田利規 | Performing Arts Network Japan

しかしクラウドソーシングの登場で、考えられないほど安い値段で発注がかけられるようになりました。


価格破壊が進んだため、今後もプロが活躍しつづけられるのか、なんともいえない部分だと思います。

 【後編につづく】