メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

「どこかに所属することが性に合わない」という元バンドマンが会社を立ち上げた話

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2015年7月9日に取材した東京のセールスプロモーション会社「HITScompany」の紹介文です。
お蔵入りしていたものを蔵出しいたします。
取材文のサンプルとして御覧下さい。
記事の内容は取材時のものです。

 セールスプロモーション(以下「SP」) という業種がある。日本語では販売促進。消費者に企業の製品を知ってもらい、購入に結びつける宣伝活動のことだ。景品・試作品の提供、街頭キャンペーン、ビデオやポップなどをつかった売り場での陳列、販売店での無料体験コーナーの設置などさまざまな方法がある。マスメディアを使った宣伝広告もSP の一環である。

 東京・目黒に本社を構える「HITScompany」は、このSP に特化した企業だ。柱となる業務は、ショッピングセンターなどのブースで通信機器の販売促進をすることである。高速通信でおなじみの WiMAX などを、来店客に紹介。使いやすさや性能の良さをアピールして購買につなげるのだ。

 通常こうした業務ではアルバイトを派遣するイメージがある。しかし「HITScompany」では自社雇用の正社員を派遣しているという。今時の企業にしては珍しい。なんだか古き良き日本企業の姿を見るようだ。

 社員が店頭に立つ場所は1日平均10箇所。毎日違う場所に派遣するため、1月で300箇所程度カバーする計算になる。ほかにノウハウをシェアしているパートナー企業が十数社あるので、1年間でカバーする店舗数は膨大な数に上る。

 創業社長である吉澤卓郎氏に、SPの面白味を訊いてみた。

「SP は店舗を持たずに、既存の人が集まる場所に行く仕事です。集客がある場所と繋がりがありますから、新しい商品が入ってきたとき、適所で販売出来ることが強みですね。つづけていくことで拡がりが出てくる仕事です」

「HITScompany」が得意としているのは、新しいライフスタイルを提案することで商品に関心がなかった層を取り込み、顧客としてしまうことだ。いわばまったくの新規開拓である。

 同業他社の多くはターゲットとなる顧客のうち、7割を類似商品からの引きはがし、3割を新規開拓としている。しかし「HITScompany」の顧客割合は逆だという。ボリューム層は新規開拓だ。

「他社が出来ないことをやらないと生き残れません。社員たちと『新規開拓』と言い続けて少しずつ出来るようになってきました」

 継続は力なり。長く残ってくれた社員が軸となってノウハウを蓄積し、後輩たちに伝えることで会社全体の力が向上したのだ。

 吉澤社長は人と人との繋がりの重要性を理解している。したがって情報は社内ですべてオープンにしているそうだ。

 そのきっかけとなったのは、創業2年目の危機だ。同社の創業は2009年の3月。前職で SP を6年ほど経験していた吉澤社長は、当時日本でも販売がはじまっていたウォーターサーバーに手応えを感じ、数名の仲間と会社を立ち上げた。しかし創業2年目に入ると売上が上がらず、会社は危機を迎えた。

「そのとき会社の現状を社員たちに正直に伝えたんです。当時はまだ7、8名しかいない状態でしたが、『未来は見えている。ここだけ乗り越えればいける』と言って鼓舞しました。社員が一丸となってくれたお陰で乗り越えられたんです。あの危機を凌ぎきったことで、なにがあっても揺るがない強さを手に入れました。これがうちの強みになっています。良い転機になりました」。

 同社は独立も支援している。すでに3人の社長が誕生し、同社のパートナー企業として辣腕を振るっているという。

 現在同社が力を入れているのが、国内Wi-Fiレンタルの「カシモバ」だ。一時帰国中の日本人や来日観光客向けのWi-Fi 機器短期レンタルサービスである。

 もともと同社ではモバイル機器のSP を行っていた。あるときお台場で中国人観光客がブースのモバイル機器を指差し「レンタル、レンタル」というので試しに小さく始めたところ、かなりの反響が得られたのだった。

「在庫切れでどんどん追加発注している状態です。一般消費者だけでなく、法人からの申し込みもあります。電話対応がネックになるので日本語のサービスしかしていませんが、日本語の出来る海外の方からもご利用頂いています」。

 現在は経営者として会社を切り回している吉澤社長だが、元はバンドマンだったという。高校卒業後、上京してドラムを叩いていた。あるとき有名ミュージシャンのプロデュースでアルバムをつくったのだが、どうもしっくりこない。そのままバンドを脱退し音楽から足を洗った。就職も考えたが、どこかに所属することが性に合わない。SP の会社で責任者として3〜40名の面倒を見つつ、大学の通信教育で建築を学んでいたという。しかし単位を半分くらい取ったところでウォーターサーバーに商機を見いだし会社を設立。今に至っているのだそうだ。

「社員には『枠に囚われなくていいぞ』と言っています」という吉澤社長。大胆な転身を恐れない生き方からは学ぶことが多そうだ。

(株)HITScompany(かぶしきがいしゃ ひっつかんぱにー)
社長:吉澤 卓郎(よしざわ たくろう)
〒153-0064 東京都目黒区下目黒1-3-27 アセンド目黒ビル6F
https://www.hits-company.co.jp/

www.hits-company.co.jp

 蛇足になりますが……吉澤社長のバンド、ぜったいにビジュアル系だったと思います。顔が濃くて、一度見たら忘れられないくらい強い印象が残りました。なおトップ画像は著作権フリーのイメージ画像です。