メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

タワマン街豊洲に独特なアクセントを加えた、1軒のカフェの話

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Photo : allen watkin www.flickr.com

The Beach 55 藪崎陵史さん

2015年5月14日に取材した東京・豊洲の「The Beach 55」の紹介文です。
(※2017年、リニューアルに伴い「MAGIC BEACH」と店名変更するようです)
お蔵入りしていたものを蔵出しいたします。
取材文のサンプルとして御覧下さい。
記事の内容は取材時のものです。

 2020年の東京オリンピック会場候補として、そして築地市場の移転先として開発が進む豊洲エリア。海が近く、広々とした敷地に高層マンションが立ち並ぶさまは、横浜のみなとみらいを連想させる。さわやかな潮風とひろがりのある緑地、幅広い街路が魅力のこの新しい街は、真新しいキャンバスのようだ。

 そんな豊洲に地中海のまばゆい砂浜が出現した。「The Beach 55」は「フランスの海の家」をイメージしたバカンスカフェである。バーベキュー施設やコンテナ型のショップストリート、芝生のイベントスペースと一体開発されたビーチタウンの一施設だ。タワー型マンションが並び立つ豊洲は、言うなれば「上空に日常、足元にはリゾート」が広がるエリアだが、この一角はその「リゾート」を体現している。エントランスを抜け白い砂浜を取り囲むように伸びたボードウォークを歩いているうちに、気分が晴れ渡ってくる。店内に波打ち際があるわけではないが、実際に海が近いため吹き付けてくる潮風はほんものだ。330もの席数を誇る店内は広大で、ゆったりした間取りはリゾート空間らしいノンビリした時間の演出に貢献している。白いペンキと無垢材とすだれ掛けの屋根。座り心地のよいシート。う~ん、くつろげるなぁ。

 店舗の責任者である藪崎さんは精悍な男性だが、リゾートカフェらしいリラックスした雰囲気で現れた。この店は、すぐそばで営業している話題の都市型バーベキュー・スペース「ワイルドマジック」の成功を受けて出店を依頼されたという。

wildmagic.jp

「この店は『日本にないものを作りたい』という想いを念頭に立ち上げました。ネットで海外のトレンドを徹底的にリサーチしたのですが、白い砂を敷いた店はうちが日本で最初のはずです。砂はベトナムから550トン輸入しました」

 550トン! すごいスケールだ。

 主な客層はこの砂浜目当てのアッパー層。近隣のタワーマンションに住むご近所さんが中心で、7割が女性だという。とくに子連れのママさんたちからは好評で、「海がないので目を離しても子供の安全を心配しないで済む」との声が上がっているという。大きな砂場のような感覚で純白の砂と戯れる子供たちのために、おもちゃの貸出も行っているそうだ。

 花の都パリでは毎年夏になるとセーヌ川沿いに人工ビーチが出現し、都会にいながらにしてバカンスを楽しむことができるそうだが、ここにくれば東京でも同じ体験ができるわけだ。

 料理もフランスの風を感じさせる。ぶどうの枝でスモークする「フレンチ・バーベキュー」やカナッペ、チーズフォンデュ、アヒージョ、牡蠣をはじめとした海鮮ダイニングなどなど。そこにオーガニックワインシャンパンをあわせて楽しむと、確かに行楽地にいる気分だ。

 最近力を入れているのは新メニューの「エアーズロック・スモーク・フィレステーキ」。重さ1キロというヘビー級のステーキだ。5~6人前に匹敵する肉が巨大な塊となって出てくる。それを開放的なテラス席でじっくりスモークする、という趣向だ。肉を焼く、というたったそれだけのことが、楽しげなイベントになってしまうのが嬉しい。

 豊洲タワーマンションが林立する都会ではあるが、住宅地である。オフィス空間とは異なる緩やかな時間が流れている。おまけに潮風と広大な敷地の白い砂だ。ロケ地としてこの店で頻繁に撮影が行われているというのも頷ける。

 そんなお洒落な店を作り上げた藪崎さんだが、意外なことに都内の下町の出で、飲食業に興味を持ったきっかけは、地元に来たスターバックスだったという。たった1軒のカフェが来ただけで、街の雰囲気ががらっと変わったのだそうだ。その事実に衝撃を受け、「内部に入り込んで内情を知りたい」と思ったのが、すべてのはじまりだった。お客様ともっとも近い接客業はカフェである、という想いからすっかりカフェ業界に魅了された頃、知り合いとなった社長から「大手のバックアップなしで、なにもないところから店を立ち上げてみないか」と言われ、それが縁で現在の会社との物語が始まったそうだ。

 たった1軒のカフェと言うなかれ。その一軒があることで、ニュータウン独特の平坦さにアクセントが生まれることもあるのだ。「The Beach 55」はまだ発展途上の埋立地豊洲に、ほかにはない個性を打ち立てる楔なのかもしれない。

THE BEACH55(ざ びーち ごーごー)
責任者:藪崎 陵史(やぶさき りょうじ)
〒135-0061 東京都江東区豊洲6−1−14
http://thebeach55.com/

thebeach55.com