メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

花屋をひらいたシンデレラガールの話

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2015年7月6日に取材した東京都渋谷区の「Patisserie+Flower」の紹介文です。
お蔵入りしていたものを蔵出しいたします。
取材文のサンプルとして御覧下さい。

 子供の頃の夢を実現させた人は稀少だ。片山結花さんはそんな稀少な女性である。

「子供の頃、体が弱くて入退院を繰り返していたとき、よく花をもらったんです。花を見て元気になって『こういうものをつくれるようになりたい』と思ったのが、花屋なると決めたきっかけですね」

 その後高校、大学と進み一般企業に就職。働きながら専門学校に通学し日本フラワーデザイナー協会(NFD)の資格を取得した。資格習得を機に岡山から上京し、ベンチャーのウェディングプロデュース会社の花部門に転職したものの、担当者は片山さんを含めて2人だけ。在籍期間は3年だったが、新郎新婦との打ち合わせ、市場からの朝の仕入れ、製作、納品という仕事を何百件も廻しつづけかなりハードな毎日を過ごした。

 転機となったのは2006年。ファッションブランドのFENDIが主催する「シンデレラオーディション」に応募したことだった。「夢を持っている女性を応援します」という触れ込みで、ジャンルは不問。「将来は花屋さんをつくりたい」という夢をつづり、作品と一緒に応募した。応募者1,000人と難関だったが、なんとファイナリストの4名の1人として選出され、シンデレラガールとしてラジオや雑誌で引き合いになった(プロデュースが「くまモン」を手がけたことで知られる小山薫堂氏だったため、メディア展開がスムースに運んだのだった)。

「会社にはまだ所属していましたが、メディア露出のお陰で私個人の仕事がどんどん入ってきました。初めのうちは会社に仕事を入れていたのですが、結局夢だった独立を果たしてしまいました」。

 片山さんの株式会社 Uca は2007年に立ち上がった。初めは自宅兼の SOHO から始まり、現在の立地は代官山で、「店舗を持って私をフォローしてくれる頼もしいスタッフと花屋を経営する」という目標が達成できた。

 主な業務は企業向けの仕事で、イベント装飾や会場装飾などを手がける。ほかに一般個人向けのギフト商品「メッセージローズ」も提供している。これはプリザーブドフラワーにインクジェットでメッセージや写真を乗せた商品だ。誕生日などのギフトや引き出物、ノベルティーグッズとして好評だという。

 ちなみにメッセージを入れたバラの花だが、東日本大震災の3ヶ月後に来日した米歌手のレディー・ガガ菅直人首相がギフトとして送っている。この花のプロデュースも同社の仕事とのことだ。

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レディーガガに送られたバラの花(2011年6月30日付け、ガガのtwitpicより)

 会社の業務の他に、片山さんはカルチャースクールの「ヒューマンアカデミー」でフラワー講座を担当する講師としての顔も持っている。ここで教壇に立つのは週二回。一コマは三時間だ。カリキュラムは FADA(一般社団法人デザイナーズスキル認証機構 FLOWERアート&デザイン協会)のカリキュラムに沿っており、「インテリア」「ウエディング」「フローリスト」 「シーズン」の四つで構成されている。

プロとして認定資格されるまでは

プライマリー → アドバンス → エキスパート → プロフェッショナル

という過程を経なければならない。一つの工程を終えるには約半年かかるため、一通り学ぶためには最低2年は必要である。最終的には自宅でレッスンを行ったり、フローリストとして即戦力となる人材として花屋で働くことができる人を育てるのが目標だ。 

「FADAのカリキュラムには目標を持っている受講者が多いです。講師陣もフラワーアレンジの基本をベースに、実際に花屋で働いた時にすぐに使える技術も含めて教えています」。

 即戦力として役立つ知識とは、具体的にどのようなものなのだろうか。

「フローリストの仕事のなかで、基礎的なものに『水あげ』があります。市場から来た花に水をあげて生き返らせるんです。このやり方次第で花の寿命が大きく変わります。こういう基礎の部分からしっかり教えています」。

 端から見ていてトントン拍子で夢を叶えてきた様に見える片山さんだが、諦めようと考えたことはなかったのだろうか。

東日本大震災の直後は自粛ムードが漂い、それに比例して売上が落ちました。経営不振に陥り、会社を畳もうかとも思いました。

 そんなとき信頼する先輩に相談したんです。すると『花は食べ物と違って必需品じゃない。だから今すぐは必要ないかも知れない。だけど次に必要になるのは心のメンテナンス。そのときがあなたの出番だよ』と言われました」。

 その言葉を受けて片山さんは原点回帰。社員たちとともに福島の被災地にひまわりの花を千本持っていったという。避難所になっている体育館に行ってブースをつくったところ、食べ物や飲み物の列よりもひまわりの列の方が長かったという。用意した千本があっという間になくなり、片山さんは花の持つ力を再認識した。

 じつは独立当初は経営の知識がなかったのにも係わらず、経理や営業などすべてを1人でこなしていたため3年間ほど苦労を経験するなど、影の努力は人一倍していたと感じられる片山さん。努力家で生まれ持った運にも恵まれた人物は、シンデレラという言葉が似合うかわいらしい人だった。

Patisserie+Flower(パティスリーフラワー)
代表取締役:片山結花(かたやまゆか)
東京都渋谷区鶯谷町12-5 大芦ビル1F
http://www.uca-design.com/

www.uca-design.com