メケメケ

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町工場や倉庫がひしめく運河のほとりから、セカイに向けて書き綴るブログ。

マクロビごはんと歩んできた中田はるさんの話

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料理教室 haru natural food and life 中田はるさん

2015年5月25日に取材した東京・石神井の「haru natural food and life」の紹介文です。
お蔵入りしていたものを蔵出しいたします。
取材文のサンプルとして御覧下さい。

マクロビオティック(以下「マクロビ」)」という言葉をご存知だろうか。

 玄米菜食を中心とした「自然の法則に従って食べる」ことを大切にする食事法で、オーガニックフードなどとの関連の中で話題になることが多い。戦前、食文化研究家の桜沢如一氏(1893〜1966)が提唱したとされ、欧米で支持された後、逆輸入の形で日本に入ってきたという。「haru natural food and life」を主催する中田はる先生は、桜沢如一氏のパートナー桜沢里真氏(1899〜1999)から直接教えを受けたという経歴の持ち主だ。

「戦時中、父が病気療養をしておりまして、どこかで桜沢先生の玄米食のお話を聞き直接指導を受けたのが、私とマクロビのご縁の始まりです」

 はる先生の両親は、桜沢氏直伝の食事法を実践していた。父方の祖母もその食事法を取り入れ、どんどん元気になっていったという。自宅の食卓は玄米食だったが、世間は「白米がごちそう」という日本の伝統的な価値観で動いていた。はる先生がまだ幼かった昭和30年代は、添加物やインスタント食品が出始めた時代だった。甘い食べ物も大量に出回っていた。しかしはる先生の実家では、砂糖をつかった甘いモノが食卓に並ぶことはなかった。

 そうした家庭と世間との間に横たわる価値観のギャップを背景に、はる先生は食生活への関心を強めていく。大学では生物科学を学んだが、これは食事と生命に対する興味から選んだ科目だった。

「人は食べて生きている、ということをもっと知りたいと思ったんです」と先生は語る。

 やがて先生は母親が自己流に咀嚼したマクロビではなく、本流のマクロビを学びたいと考えるようになり、桜沢里真氏が主催する「リマ・クッキング・アカデミー(現・リマ・クッキングスクール)」に通いだした。

lima-cooking.com

 マクロビは「万物は陰陽からなる」という「無双原理」を根底に置いている。この原理に則って、玄米の洗い方、千切りの仕方(陰陽が一度に入るように斜めに切る)、主食・副食のバランスや四季折々の調理法などを理論づけながら学ぶ。また「一つのものを丸ごと食べる」ことを意味する「一物全体」に従って、米なら精白しない玄米を、野菜や果物は皮を剥かずに泥だけ落とす、魚も頭から尾まで丸ごと食べる、といったことが奨励される。これは「栄養を食べるのではなく、生命を頂いているのだ」という考え方に由来しているからだそうだ。また地元でとれたもの、季節の旬のものを食べるという「身土不二」、食物の陰陽のバランスを考えて調理する「陰陽調和」(例えば炒めものの際には、陰性の食物から炒め始めるのが良いとされる)など東洋思想にもとづいた体系を論理的に覚える必要がある。

「マクロビが注目され出したのはここ10年くらいですが、世の中はファーストフードやコンビニ食と、オーガニックな食事とに二極化していますね。情報が氾濫する世の中になって、自分の中に軸がないとちゃんとした食生活が送れなくなっていると思います」。

 昔はあるものを食べるしかなかったが、それが自然に適った食事でもあった。美味しいものを追求するだけでは、地球環境にも悪影響を与えてしまう。単純に体に良い物を食べるだけでなく、もっと「自然の中で生かされている自分」を踏まえて食べる、という自然との共生を踏まえた哲学的な体系がマクロビオティックなのだ。

 保谷のせまいアパートで月1回開講という風にして始まったはる先生の教室は、現在週2回開催という形に発展している。初級・中級・上級は12回ずつで、その上に提携するリマ・クッキングスクールで受講する師範コースもある(別途スイーツコースも設けられている)。長い人は2〜3年通っているという。

 クラスの平均的な参加人数は3〜5人程度。決まった入学日があるわけではなく、生徒たちは都合の良い日から通い始めるが、全員が同じレシピを受講する。つまり初回参加の生徒も、10回目の生徒も同じことを教わる仕組みだ。レシピは教科書に則っているが、28回参加すると、初級なら初級、中級なら中級という具合に各コースのメニューをすべて学ぶことが出来る(ただし上級コースだけは教科書はなく、はる先生のオリジナルプリントを使用している)。

 参加者は若い独身女性から60代の方まで幅広いが、ボリューム層は小さな子供連れのお母さんたちだ。家族のように和気あいあいとしながら、クラスの途中で参加者が我が子におっぱいを飲ませることもあるなど、かなり家庭的な雰囲気が特徴だ。はる先生自身、昔は赤ん坊を抱えながらほとんど休まず教えていたそうで、無理をせず、のんびり、ゆっくりしたペースでも構わないので続けてほしいとのこと。人によっては、12回受講するのに2年かけたケースもあるそうだ。

 持続可能な社会やロハスなど、環境のことを考えた生活を送りたいという人に是非オススメしたいスクールである。

haru Natural Food and Life(はる なちゅらる ふーど あんど らいふ)
担当者名:中田はる(なかた はる)先生
東京都練馬区石神井町8-30-7

haru© -Natural Food and Life- (リンク切れ)

www.cooking-haru.com